子供の頃、天気に関して母の予想は天気予報よりも当たるので、彼女を魔法使いのように感じていました。
例えば朝起きてすぐに今日は雨になりそうだから洗濯はやめておこうとか、南風がこれから上がるから潮でベタベタになる(海からすぐのところに住んでいたので)から布団は干さない、とか。外に出る前から今日は北風だから晴れて富士山がくっきり見えるわねとか、大雨なのに夕方には雨が上がって夕日が綺麗になるから見に行こうとか。天気予報よりも彼女の予想の方が当たるのでした。
そんな私も海のスポーツが好きになり、今日は風が吹くかな、とか波が上がるだろうかと言うことが気になってしょうがなくなるようになってからは、常に天気を気にかけるようになり、母の天気の予想を頼りにしながらも自分でも少しずつ理解するようになっていきました。
朝起きた瞬間左の耳から外の音が聞こえるときは海側から風が吹いているから南風、つまり潮っけが強いので洗濯物を干すとベタベタする。右の耳から音が聞こえるときは北風なのでちょっと空気がひんやりしている。遠くに見える海を見ても朝は穏やかな海面の時が多いけれど同じ穏やかな海面でも北風と南風ではその後も天気もかなり変わるのです。ほほう、母はこうやって天気の変化を予想してたんだなと種明かしができました。
決していつも同じパターンではないけれど、北風で寒く、雨が降っているときは見た目が穏やかでも沖ではさらに強い北風になることが多く、また朝から弱い南風で沖の海が少し黒ずんでぼこぼこしているときはその後南や西の風がものすごく強くなり、大荒れになることがよくあります。一番1日を通して穏やかになりやすいのは朝弱い北風で晴れている日、その後お昼前くらいに陸が暖められることで北風が弱まり一旦海は凪いでその後弱い南風に変わります。いわゆる天気予報でいう北、日中南の風というもので、観光や外で遊びには一番の天気ですが、実は海の波と風を待ってる私にとってはその天気は一番役立たずでもあるのです。
生まれ育った鎌倉の天気はこのように今日は海で乗れるかな、今日こそはいい波が立つかなと10年くらい毎日そのことばかり考えていたことで身につきました。当時は波情報など一切なかったし、気象庁の現在の風速を知らせてくれる電話だけが頼りでしたが、そのぶんいろんなことを観察することで海や天気に対する感覚を養っていけたのです。
でも母はそれこそ60年以上同じようなことをやってきた大先輩なわけで、今日は洗濯日和かな?今日出かけるとき傘を持って行ったほうがいいかな?潮の関係で海に何か食べ物が打ち上がってるかな?と日常生活のためにいつも天気を気にして自然が送ってくるサインを見逃さずに天気予報士よりも当たる予想ができるようになっていたのです。
だれでもどんなことでも長い間気にかけて観察していると、ちいさな変化に気づく能力を得ることができます。例えば母親は子供のちょっとした変化、あるいは変化が起こる前にでもなんとなく虫の知らせのようなものを感じて「どうしたのかな?調子が悪いのかな?いやなことがあったのかな?」と察知します。なぜなら母親はその子が生まれた時から全ての動き、変化を見逃さず、その子の感情を受け止め、表情を見つめ続けてきたから。子供が何も言わなくても何かを感じます。
山岳や海での単独航海などしている冒険家なども同じようなものを持っていると思います。普段から自然の中にいる人たちなのでいろんなことを観察し、危険を避け、安全な楽しみ方に気を配ってるはずですが、大きな冒険になると天気の変化や一つの判断ミスが命に関わるので五感をフル活動させなくてはならない、体を鍛えるのと同様、こういう感覚も普段から鍛えておかないといざ必要な時に働いてくれないのです。そして冒険家たちの凄いのは、なんとなく、今日はあそこに行かないほうがいいと思った、とか、このルートはやめたほうがいいと感じたというような第六感に従って、大事故を免れていることが多々あるのです。
でも第六感ってなんなんだろう?特別な人が持つものなのでしょうか?
第六感というと未来を予知するとか、霊的なものを持っている人のように思う人もいるかもしれないけれど、私は実はそれって人間がもともと誰でも持っていたものであり、それを取り戻しているかすっかり忘れているかの違いじゃないかと思っています。
一つの分野でいろんな経験を積み、常に観察を続け、いろんなパターンを知ることで次に起こることが予想できるようになるとか、そんなものが発達したものが第六感なのではないかと思うのです。
親なら子供のことは大事だから朝から晩まで観察し、何かあってもすぐ気がつく、表情を見ただけで何か学校で嫌なことがあったのかな、とかちょっとした声のトーンで今日はいいことがあったのかなとかわかる。子供に何かあると離れていてもそれを感じたりもします。それはまさに第六感だけど、それって常に子供とふれあい語り合い、一緒にご飯を食べて、話を聞いて、一挙一動を見ていて無意識のうちに五感をフルに使って理解しようとしているからわかって来ることで、それと同じだけのエネルギーをすべてのことに注ぐのは無理でも自分が好きなことや夢中になってることには同じ感覚を得ることができるのではないかと思うのです。
お医者様なら患者さんのことを一生懸命直そうと思っているからちょっとした直感や判断ができたり、警察や消防署の人たちは危険や事故に起こる前から敏感でしょう。
だからまずはできるだけのことに五感を駆使して向き合うような生活を心がけたい、通勤通学の道で見る花に対してもこの花の名前はなんだろう、昨日より大きくなったな、とかいつも通りかかる人の服や表情が今日はちょっと違うけどいいことがあったのかなとか、常に周りに気をかけ、困ってそうな人には自分ができることを考えたりすることでいざという時にさっと行動が起こせるようになるとか。
多分私たちは忙しすぎていろんなことにあまり気持ちを込めずに生活している気がするのです、全てにいちいち構うのは無理でも、大事なことには時間とエネルギーを注ぐ努力をし、それを観察し、耳をすませ、心を開いて理解しようとする。手で触れたり時間を共にしたり、話したりすることで五感を駆使してそれに対する理解を深めようをすると普段はわからない、目に見えない変化も感じられる第六感へと繋がるんだと思います。そして第六感があるって素敵なことだと思いませんか?自然のエネルギーのシフトを感じることができるって人間が本来持ってた素晴らしい能力だと思うんです。
最近コロナ禍の影響で遠くに旅することを控える人が多く、身近な場所でアウトドアを楽しむ人が増えています。それ自体はとっても素晴らしいこと。
サーフィンもスケートもハイキングも自転車もブーム状態で道具も売り切れて手に入りにくいことがあるそうです。
ただ気軽にできそうでいても自然を相手にしているので危険はいろんなところにあります。どんなに人に注意されても本で読んで知識をつけても感覚で感じる危険というものは経験、長い間に培うものでしか得ることはできません。
そしてどんなに知識や経験があってもそれを上回る、いわゆる想定外のことが起こりうるのが自然です。そんな時に第六感が役に立つのです。
なんとなーく乗り気じゃないから今日は海に出るのやめようと思ったらサメが出たらしい、とか、このコースをハイクするのはなんか嫌な感じがするから向こう側を歩こうと決めたら最初に予定していたコースで雪崩が起きたとか、理屈では説明できないことがたくさん起こるけど、五感を日頃から駆使することを意識していくうちになんとなく、という感覚にも敏感になり、判断することもできるようになって来ると思います。
自然は素晴らしい、でも人間も自然の一部でものすごい魔法に満ちた生き物なんですよね。(Tomoko)
自然の中で、自然の一部である、私たちの第六感を磨いてみませんか?
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岡崎友子 Tomoko Okazaki プロフィール
オーシャンアスリート&ジャーナリスト。鎌倉、由比ヶ浜で生まれ育つ、女性のプロ・ウィンドサーファーの先駆けで、プロ・カイトボーダー、バックカントリー・スノーボーダーでもある。16歳でウィンドサーフィンを始め、20代でマウイ島に移住。1991年のウェイブライディングで世界ランク2位を記録。ウインドサーフィンの他にもスノーボード、カイトサーフィン、SUP、フォイルなども初期の頃からパイオニアとして世界の情報を日本に紹介している。 スノーボードではアラスカやそのほか多くの大きな山を滑る初の日本女性スノーボーダーとなり、場所や道具が変わっても、いい波や風、雪を求めて旅を続けるスタイルは変わらず。旅や出会った人たちから受けるインスピレーションをテーマにフリーランスのライターとしても活動中。パタゴニアのアンバサダーとしても活躍し、ジェリー・ロペスの著書『SURF IS WHERE YOU FIND IT』の翻訳も手がけた。現在もマウイをベースに風と波を追いかけながら旅を続け、インスピレーションをもらった人たちや場所、出来事について記事を投稿したり、ツアーやイベントで自然と向き合える経験をシェアする活動を続けている。自分が恩恵を受け続け常に多くを学んできた自然を大事にしていかなければという危機感から、近年はキッズキャンプや環境活動に力を入れている。
株式会社BEACHTOWN アウトドアフィットネス エンパサイザー(共感者)